まえがき おとなの私

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まえがき おとなの私

私は今、四十八歳。今年の夏、最後の四十代を迎えます。  こどもの頃、いつも心がもやもやしていました。おとなになったらきっと、なんでもわかって、悩みなんてなくなるだろう……と思いながら生活していました。  はたちをむかえて、「おとな」と呼ばれるようになって三十年。一生懸命生きてきたつもりなのに、悩みは少なくならず。 「いいおとな」になりたかったのに、いまだに頼りないままのような気がします。  ただ、一応一生懸命生きてきたので、もう二度と同じ道は歩きたくありません。  あの時に戻れたら、とか、そういうことは、思ったことがないのです。  それなりにいろいろ体験したから、ただ前を向いて歩いていきたい。時間は戻らなくてもいいのだけれど、もしも、こどもの頃の私自身を助けることができるのなら。  それはやってみたい、と思っています。  矛盾しているでしょうか。  こども時代は、なにげにおとなの助けがたくさん必要だったりしますから。  もし、あの時に、誰かがそばにいて解決していけたとしたら。私にもその役が出来るとしたならば。  私はその子のそばにいて、なにもできなくても話を聞いてあげたい。  そんなことを思っていたら、こんな話が生まれました。  この物語を読んで下さる方々は、どんなことを思うのだろう。  いまはただ、ドキドキしています。
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