3章 野営の話

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「やっぱりな…これは少量とは言わん。痛いだろ?」 ヒューイさんが指差した肩の辺りは、首元…鎖骨の辺りまでドロドロになっている。筋肉が少しやられている気がするし、布も溶けたらしく、嫌な感触がする。 「まぁ、はい……実を言うと。」 「俺も手をやられたが、正直のたうちまわりたいくらいの痛みだった。お前、痛覚鈍いのか?」 「そういう訳では無いです。ただ、戦いの中で痛みで動きが鈍ると死にますから…どこか安全な建物の中に入るまで気を抜かない事にしているんです。」 「……そうか。すまん、フランちゃん。こいつのココも治してやってくれ。」 フランさんは俺の肩まわりを見ると小さく悲鳴を上げた。涙目になっている。……確かに、これは気持ち悪いな。 「す、すみません!腕だけだと思ってて…っ!"彼の者の傷を癒せ…ハイキュア"!」 「言わないこいつが悪いから、フランちゃんのせいではないさ。お前も、言う時はちゃんと言え。今回みたいに、手遅れになる。」 さっきの魔法ではもう戻せないらしく、普通の治癒魔法がかけられた。ドロドロに溶けていた所が、ケロイド状くらいまで落ち着く。痛みもずいぶん引いた。 「……すみません。詠唱した魔法でも治るのはここまでです。後は、手術をして皮膚を移植するとかして治さないと、綺麗になりません。」 「いえ……言わない俺が悪いです。お手間を取らせてすみませんでした。手術をしてまで治す気はありませんから、このままで大丈夫です。」 袖などが溶けてしまったので、予備のシャツに着替え、再び鎧を着直した。 「えっと……ひとまず、あと5時間くらいで次の町に着きますが、行きますか?」 そう言うと、ジャックさんがガバッと立ち上がる。 「行く!こんなに魔力消費してんのに、ベッドで寝れないってのはおかしい!みんな、行くぞっ!」 ジャックさんはフランさんの手を取ると歩きだした。やっぱり、フランさんがこの中では1番疲弊しているだろう。早く町に着きたいな。
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