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「お買い上げありがとうございます。失礼ですが、当店の商品のご利用方法はご存じでしょうか?」
目の前にいる店主の畏まった質問に、思わず目がテンになった。
「・・・ご利用方法?・・・それって、グラスですよね?」
「はい」
「グラスって大雑把に言えば、液体を入れる容器ですよね?」
「飲料だったり、花を活けたり、もしかすると小さな魚を育てるための鉢かもしれません。用途は人によってそれぞれ違うと思いますが」
では何故、そんな当たり前の質問をこの店主は僕に投げかけたのだろう?訝しげに思ったのが、表情に出ていたみたいだ。
店主はくすりと小さく笑った。
「変なことを聞いてしまってすみません。実は、当店のグラスには秘密があるのです」
会計を済ませると、傷が付かないように厳重にグラスをペーパーで包み、箱に入れる。
慣れた手つきで、包装を終えると、店主は重大な秘密を告白するように、そっと僕に耳打ちする。
「グラスの中を覗いてご覧なさい。きっとあなたの想い出に辿り着くはずです」
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