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路面電車に乗っていた。
席には座らずに乗降口の近くに立って、流れる景色を車窓から眺めていた。
石畳の通りにレトロな街路灯、煉瓦作りの建物が並ぶ。
どこか欧州めいた景色に引き寄せられ、思わず電車を降りてしまった。
「想ひ出通り」と名の付いたバス停みたいな駅。
古い建物の臭い。
石畳の通りを照り付ける日差し。
僕はふと降り立った街の散策を楽しんでいた。
人通りの少ない奥まった所に小さな店を見つけた。
他の店と同じように煉瓦作りの外観で、鮮やかなステンドグラスが埋め込まれた扉の横に「たまゆら洋盃店」と金色の文字で綴られた看板が掲げられていた。
洋盃?
看板の上にアイアンでワイングラスを模ったオブジェが飾ってある。
グラスのことか。
覗いてみよう。
ちょっとした好奇心から僕はその店に足を踏み入れた。
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