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ざぁと風が吹いて、白、桃、紅のコスモスを揺らした。
その度に細い糸のようなコスモスの葉が僕の手に触れる。
夢じゃない。
確かに僕はコスモス畑の中に立っている。
空を仰いだ。
高く澄み切った青が広がっている。
僕は何でここに立っているのだろう?ぼぅとする頭で考えても答えは出てこなかった。
キャン キャン!
はしゃぐ犬の声が聞こえ、ペタペタと足音がこちらに近づいてくるのが解った。
音のする方へ視線を向けると、コスモス畑へと面した道端で子犬が飛び跳ねていた。
続けて女の人の声、どうやら、子犬を追いかけているらしい。
息を切らしながら、子犬の名前を懸命に呼んでいた。
さわさわとまた風が囁き、青々しい香りを運んでくる。
華奢なコスモスたちが一斉に体を揺らす。
彼女も、一面に広がるコスモス畑に気付いたらしい。
ポカンと口を開け、呆気にとられた顔をしている。
驚き、そして歓喜の混じった表情。
それは、彼女にとって初めて目にする景色に違いない。
そして僕らは対峙する。
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