たまゆら洋盃店

9/11

8人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
豆柴のような胡桃色の、元気な子犬を連れた彼女。 コスモス畑を吹き抜ける風になびく、長い黒髪を華奢な指でそっと抑える。 黒目がちな大きな瞳に、はにかんだような笑顔。 僕は彼女を知っている。 名前を呼べば笑顔で振り向く。 子供の頃から楽しい時も悲しい時も、たくさんの時間を共有してきた幼馴染みの女の子。 _____僕がずっと見てきた女の子だ。 この場所も、今ここに見えている景色も、僕の大切な彼女との想い出だったはずなのに、何で忘れてしまっていたんだろう? あなたの想い出に辿り着く・・・あの不思議なグラスがもたらした奇跡なのだろうか? 今なら言えるだろうか? ずっと胸に抱えていた想いを。 大きく息を吸って、静かに深く吐いた。 彼女の瞳をじっと見つめた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加