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恋愛なんて、馬鹿馬鹿しい。
付き合うって何?
将来結ばれるでもなく、刹那的な関係…そう、一時の気の迷いみたいなものなのに、貴重な時間を使う意味がわかんない。
そもそも、男なんて馬鹿ばっかりだし。
わたしは確かに他の女子と比べても小柄だし、客観的に見ればそりゃとても弱そうに見える。
けど「守りたくなる」なんて言われるほど弱くはないし、そう言ってきた男の大半よりも恐らくわたしは強い。
なんせ、うちのおじいちゃんが古武術の達人で、わたしはその後継者として鍛えられてきたんだから。
とはいえ、さっきも言った様に男は馬鹿だ…これを利用しない手はなく、わたしは猫を被って彼らを良い様にこき使ってる。
“ゆるふわ”とか、こんなめんどくせーものを続けてるのも、ただ、その為だけに。
とはいえ、偽りの自分を演じ続けるのは中々大変であり、ストレスは溜まる一方…わたしは自然、今の様に一人の時間を求めて屋上に足を運ぶことが多い。
初夏の風が、頬を撫でる。
暖かなソレが包み込むと同時、背後に立つ人(と言って正しいかわからないけれど)の気配。
「やぁ、ちゆりちゃん。」
「わたしの背後に立つな……消すぞ。」
「…その可愛い顔で、よく某ヒットマンばりの凄みを出せるよね。」
振り返った先に居たのは、苦笑する銀髪の男。
ここ最近わたしの周りをうろちょろするコスプレ野郎だ。
天使の様な羽をぱたぱたさせ、チカチカ光る頭上の輪っかが目障りな───そう、幽霊…という奴。
「コスプレじゃないってばー」
「どっちだって良い。」
何故、幽霊かと言えば、このコスプレ男の姿がわたしにしか見えてない様だし…幻覚を疑いはしたものの、修行に修行を重ねたわたしが自身の状態を見誤る事もない。
だから、恐らくは幽霊という奴なのだ。
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