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そもそも、わたしがさっきみたいに恋愛がどうのと持論を展開していたのも、このコスプレ野郎───ロシェと出会ってしまったからである。
「えー良いものだよー? 恋愛って。」
毎度、この調子。
自称キューピットらしいけれど…何故わたしみたいな恋愛とは程遠い女の前に現れたのだか、さっぱり分からない。
「ほら、なんだっけ? 三組の真田くんなんて良いんじゃない?」
「真田?」
ロシェの言葉から、件の真田を思い浮かべてみる。
いつも爽やかな笑みを浮かべ、集まる女子皆に平等な優しさを見せ、困っている人間がいれば、性別に関係なく全力で助けに向かう様な───
「嫌よ、あんなの。 …胡散臭いし。」
「そう? 君も仲良さげにお話してるじゃない?」
「あいつ、何故かウチのクラスまで来るのよね…他の女子に睨まれて居心地悪すぎ。 正直、迷惑。」
「…それなら、四組の小鳥遊くんは? 彼も良く君に話しかけてくるよね?」
加藤…明るめの茶髪をワックスで無造作に固め、耳にはピアス、至る所にアクセサリーをジャラジャラとつけた、絵に描いた様なキング・オブ・チャラ男である。
「騒がしいしさ…パン奢ってくれなきゃ、相手にするのもダルいっつーの。」
そう、あいつ…見た目はチャラいくせに、放課後は遊びほうける事もなく、生真面目にせっせとバイトしているみたいで。
お金の無いわたしに、ちょくちょくパンを奢ってくれるのだけど。
「下心、みえみえだし。」
「…ふーん。 そう思ってるんだね。」
吐き捨てる様に告げたわたしに、ロシェはやけに不満そうに口を窄めていた。
が、すぐに表情をコロリと笑みに変え、人差し指をピッと立てる。
「 じゃ、二組の音無くんは? 同じクラスだし、彼と話してる時は…君も嫌そうじゃないけど?」
「音無? …それこそ論外。」
確かに、馬鹿な男の中にあって、音無だけはわたしと話してても下心やら胡散臭さやらは微塵もなく、その態度には裏表を感じさせない。 正直嫌いじゃない。
けど、
「わたしはそんな目で見れないし。 そもそもあいつには……こないだ事故ったっていう、幼馴染の子が居るじゃない。」
「そっかー。」
こればかりはロシェも答えを予期していた様で、たいして気にした様子もなくにこにこと笑い続けていた。
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