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恐る恐る手のひらを覗くと、星型のあざがそこにはあった。
「これはあたしから、離れすぎると手がちぎれる魔方陣だよ。せいぜいあたしのために働きなさい」
耳元で囁かれ、俺は気づいた。
そうだ、ここには罪人しかいないんだった。
彼女に連れられ、というか手がちぎれるのが怖くて、俺は彼女と共にもと来た道を戻るはめになった。
『ログの農場』の看板はこれで二回目だ。相変わらず、美味そうなとうもろこしだ。
「ログって知ってるか?」
「知らないけど……知り合い?」
「別に」
トウモロコシ畑を横目に、俺は彼女の後ろを歩く。
今なら、逃げれる?
でも、手がちぎれるだなんて……。
試すか……!
「魔法にはさ、時間差で発動できるものはあるの?」
「ある、君にかけたのはまさにそれ」
「手がちぎれるって、そんな魔法かけて悪人になってしまったら、寿命くるまで生きて輪廻から外されちゃうな」
彼女は構わず歩きつづける。
くそ、俺より年下チビなのに。
「あんた、名前は? あたしはルーチェ。いいでしょ。可愛いでしょ?」
「俺はレイン。記憶にはないけど、老人にそう言われた」
ルーチェは、ふーんと呟き、俺の顔をまじまじと見つめた。
「まだ、着いたばかりだよね?」
「そうだけど」
「これから、この先にある『ブルーの森』に向かうから」
彼女はてくてくと小さい歩幅で歩く。小動物みたいだ。
「レイン、顔色悪いけど、『ブルーの森』より真っ青にならないでよ」
「元からだ、チビ。大体、俺のが年上だろ? 言い方ってもんがあんだろ?」
ルーチェは眉間に皺を寄せて、はぁ? と意味がわからないと言いたげな顔をした。
「あたし、見た目は16歳だけど、ここ来て5年で21歳よ? 21。わかる? 未成年のあんたには中身がわからないかぁ」
ルーチェは、地面に杖で絵を描き始めた。
「このミミズがのた打ち回ったような文字は何?」
「あんた、シレーヌの生贄にしてあげようかしら?」
「こんなので召喚するのか……」
逃げ出すチャンスはいつでもあるだろう。しかし、失敗すれば、戦う羽目になる。あんなでかぶつ相手にしたら骨が折れるのは確か。
「逃げ出すなら、あたし一人のときなんて思わないことね。人殺し、したらどうなるか……知ってるの?」
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