ぼくは、ざいにんだった

2/2
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
「ゆるじて、もう、懲り懲りだ……」 その声は、聞き入れられず、爪が一枚剥がされる。 「うあが」 声にならない声が微かに、漏れる。 苦痛に耐える僕の顔を覆面の男はぺろりと舐めた。 覆面男の舌が薄暗い洞窟のロウソクにぬらぬらと照らされる。 血だ。僕の。足元にも、ふくらはぎをなぞって落ちた血が溜まっている。背中の感覚はもうないに等しい。 鼻息荒く強引に耳元で囁く。 「このペンチで、もう一枚剥がそう」 錆びた。何で錆びてる? 血。どうでもいい。 ベリ。 「もう一枚」 剥がすの、もう足しかないのに。 ベリ。 「そして、両手のひらに釘を打ち込もう」 いあたたったたたたたい。 ドスン。 「おや、出血がひどーい。ロウソクであぶろう」 ジュー。 「片耳要らないよね? ね?」 ジョキン。 頭がおかしくそあおおおおおおおおおおおおおお。 ふざけ、あああああ。 くそ、いあたたたい。死ぬ死ぬねこれ。 響くのは嬌声。悲鳴。反響して戻ってきて。また僕の耳に入り、口から出てく。 あああああ。 「指を、二本切り落とそうか、そろそろ」 ポトポト落ちる肉片に目が腐りそうになる。 痛みが脳を刺激し、目からは血がなみなみ出そう。 腐ったパンを口に入れられ、手枷足枷のまま、咀嚼し吐く。 地獄、じゃねいか。地獄ジャネイか。 ふざけやがって。 「熱々のスープを、全身でどうぞ」 ふぎぃあいああいあいああ。 ここは、地獄だ。 「喰え食え、人間の肉だ」 煮えたぎったスープにまみれのたうち回り、おれは死にたいと切に願った。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!