2人が本棚に入れています
本棚に追加
気づけば俺は暗い、例えるなら日の差さない沼の底のような場所に浮かんでいた。
浮かんでいる?
重力がなくなったかのように体が軽い。
暗闇の中、俺は漂う。
どこへ行けばいいのだろう?
俺はどうすればいいのだろう?
額に手を当ててみる。
ない。
手が、ない。
うわあああぁぁっ!!
喉から声がでない。開く口が、ない。
『少し待ってください、もうすぐ君の番ですから』
頭に直接語り掛けられる。少年の声。軽く高い涼やかな声。
俺には頭もない。意識に語りかけられると言ったほうがしっくりくる。
しかし何を待つのか?
『光のほうへ向かってください』
どこだ?
『上です』
声の主は姿を現さない。
不安だ。状況もわからないまま、誰か知らないやつに誘導されて……。
『最初はみんな不安です。僕もそうでした』
彼は懐かしそうに囁いた。心地いい声だ。
上を見上げる。
暗がりの中にポツリと光が一つ。
クモの糸のように白い光が俺を導く。
どうやら、あの光に向かえばいいらしい。
最初のコメントを投稿しよう!