旅立ち

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気づけば俺は暗い、例えるなら日の差さない沼の底のような場所に浮かんでいた。 浮かんでいる? 重力がなくなったかのように体が軽い。 暗闇の中、俺は漂う。 どこへ行けばいいのだろう? 俺はどうすればいいのだろう? 額に手を当ててみる。 ない。 手が、ない。 うわあああぁぁっ!! 喉から声がでない。開く口が、ない。 『少し待ってください、もうすぐ君の番ですから』 頭に直接語り掛けられる。少年の声。軽く高い涼やかな声。 俺には頭もない。意識に語りかけられると言ったほうがしっくりくる。 しかし何を待つのか? 『光のほうへ向かってください』 どこだ? 『上です』 声の主は姿を現さない。 不安だ。状況もわからないまま、誰か知らないやつに誘導されて……。 『最初はみんな不安です。僕もそうでした』 彼は懐かしそうに囁いた。心地いい声だ。 上を見上げる。 暗がりの中にポツリと光が一つ。 クモの糸のように白い光が俺を導く。 どうやら、あの光に向かえばいいらしい。
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