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気づけば、四角い真っ白な部屋にいた。
俺はその中央でうつ伏せで倒れていた。
床に手を付いて、ゆっくり体を起こすと白髪交じりの黒いローブを羽織った老人に囲まれていることに気づいた。
その中で一人、白いローブを羽織った老人が一歩俺に近づき囁く。
『レイン。これがお主の名前じゃ』
レイン。どこか懐かしく、聞きなれた名前。
『まだ、思い出せわせんよ。これからなのだから』
優しい笑みを浮かべる老人の瞳は温かく、思わず気を許してしまう。
「ここが入り口なのですね。しかし、扉が見つかりません」
『おお、慌てなさんな。ここは天に近く、地に遠い。天と幻界は同じ距離じゃ、すぐに着く』
後ろの老人が服を差し出してきた。他にもいろいろあるが、これを持って行けということか?
『生前の品です。あなたの服、鞄、ご愛用のナイフと剣です』
「これが俺のもの?」
手を伸ばす。そして、気づいた。
「体が戻ってる」
『形を持たせただけじゃよ』
俺は裸の、逸し纏わぬ姿で立ちすくむ。死んだのに、感触もある。つねってみる。痛みはない。
『はよ、着なされ』
「は、はい」
急かされ、着替える。なるほど、どうもしっくりくる。
サイズ、着心地、俺のためにあるみたいだ。
しまいにはチョッキの緑色まで気に入ってしまった。ショルダーバッグを肩にかけるとおれは老人たちにぺこりと頭を下げた。
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