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『もう時間じゃな。最後に質問はあるかね?』
「言っても言い切れないほどにありますよ」
『ほほっ、絞りなされ』
老人たちはしわくちゃの笑顔で俺を見つめる。
うつむき悩む俺の目の前に広がる緑の大地。
今にも風の音が耳に聞こえそうだ。
『どうしたんじゃ。高いところは苦手か?』
「決めました」
顔を上げて、老人を見る。
腰に差した剣がかちゃりと鳴る。
「俺は人を殺したからここにいるんですよね!?」
『正解じゃな。半分』
「え?」
瞬間、俺を支えていた透明な床がぱかりと音を立てて開いた。
「うおっ!?」
体を殴るような風に吹きさらされ、広い空間に放たれる。
口を開くと風で息がうまくできない。
落下する体が強張り、うまく体勢を整えられない。
整えたところでどうなることか、まず助からないんじゃないか?
老人たちが視界の端に見えた。
が・ん・ば・れ。
そう言ってるのがわかった。
地上に落ちる寸前に差し掛かり、体を緑の膜が包んだ。
「すごい音だ、これは風の魔法だろうか?」
その魔法は俺を近くの草原に降ろすとふっと消えた。
「綺麗な場所だ」
一面の草原。
近くには、畑だろうか? 柵で覆われた場所がある。遠くにはでかい山が立ち並び頂上に雪をかぶっている。
天気がいいので、遠くまで見渡せる。
「ずっとここに居たくなるな」
澄んだ青空に違和感を感じる。
太陽が、ない。
「幻界、この明るさは幻なのだろうか?」
座り込み、近くの草を引きちぎる。草の香り、口に含むと、広がる苦味。
「不味い」
頭上を鳥が飛び去る。
豊か。その言葉は間違えではなさそうだ。
「そんなことより、腹が減った」
死んでるのに不思議だ。第二の人生、本当に生まれ変わったみたいだ。
待てよ? 年取って、ここに来たやつは死期が近いのだろうか?
それだと不公平な気がする。
とりあえず、人を探しつつ何か食おう。
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