ボクモノガタリ

2/3
前へ
/5ページ
次へ
気づくと僕は空をふわり、ふわりと飛んでいた。飛んでいたというよりは、浮いて漂っていると言った方が正しいのかもしれない。僕の生まれて初めての記憶は、青く澄んでいる空の光景だった。僕の周りには僕と同じ姿をした子が沢山いる、けれど僕等は意思の疎通が出来ないらしい。風に気持ち良く乗っていると、仲間の数十人が鳥の群れの中に入って出れなくなってしまった。彼等は羽根に引っ付いて何処かへ旅立った。 風が急になくなる、凪と呼ばれるものらしい。僕等は軽いから少しの風で飛べるのだけど、それがないから落ちていくだけだ。恐い、そう僕は思っていた。衝撃を多少感じて、何処かに落ちたと気づく。暖かい、ここはどこだろう?どうやら僕は、人間という生き物の土地に迷い込んだようだ。ここには、僕の仲間がたくさんいた。けれど、僕と同じ種族の子はいないみたいだ。ここの先輩方は太陽に照らされ、綺麗で見惚れてしまう…けれど、僕も何時かはそうなるのだ、と意気込む。 人間という生き物は、中々面倒見が良いらしく僕の世話をしてくれる。僕の生命の糧である水や栄養素を土に蒔いてくれるのだ。暖かい大地に、十分な栄養があるここは天国の様な所なのかもしれない、と僕は夢見心地にそう思っていた。月日がが経ち、綺麗で見惚れてしまう先輩方が項垂れ、かさかさの肌になり沈んでいた。対して僕は芽を出し、双葉になり背を伸ばしていた。僕は決心をした、先輩方の代わりを僕が務めるのだと。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加