夕方7時

2/3
140人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
7時35分、ついたぞーとラインをとばすと駆け足で背後に近寄る足音がした。振り返ると相変わらず可愛らしい笑顔の後輩がいた。薄茶色に染めた髪、太縁のメガネ、白い肌、線の細い体、いつもニコニコしていて人当たりのいい笑顔、こいつモテそうだよなぁなんて会うたびに思う。悔しい。 「お疲れ様です」 「お疲れー、レポート大丈夫か?」 そういえば去年の後期に一つ単位落としてたみたいだしな。今日もレポートが出てるらしいし、三年生は大変だ。 「さっさと言えば過去レポくらいやるのに」 「貰えるなら欲しいです」 「探しとくよ」 たまには先輩面したいお年頃、とっておいたレポートが役に立つ日がきた。 「さて、何飲みたい?」 「何でもいいですよ」 何でもいいが一番困るってのに。 「そーだなー、お前あんまり飲めないから日本酒とか焼酎じゃないほうがいいか?」 「や、なんでも付き合いますよ?」 嫌なら嫌って言ってくれ。選択肢を狭めたいんだ。どうこう言ってるうちに結局ワインが飲めるとこになった。最近ワインが飲めるようになったとかで。 「意外だなぁ、カクテルとかのが好きなのかと思ってたよ」 「いや、ワイン飲めたらカッコいいかなって」 照れ笑いが様になる男ってズルいと思いませんか。そんな照れ笑い誰がやっても似合うもんじゃない。また悔しい思いをしてしまった。 「どーせ、彼女の前でかっこつけたいだけだろ」 悔しいから意地悪してやる。 「そうなんですよ。でもまだ一回も彼女の前で飲めてないんですけどね」 「もったいねー」 意地悪したのにあっさりのろけられた。先輩ぐれるぞ。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!