第1章

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○アスナの夢の中・過去のグラゼ(夜)   テロップ『三年前・グラゼ』   空が割れた日――。   燃える市街地。   逃げ惑う人々。大八車に荷物を載せて逃げる者。 崩れた建物の下敷きになった者とそれを救助しよ うとしている者。   親とはぐれて泣いている子供。   炎に包まれたその光景は地獄そのもの。   街の上空には、巨大な生物ガリオン。   翼の生えたトカゲのような容姿。額には結晶体が 埋め込まれており、三目の   ように見える。   ガリオンは、大地を揺るがすほどの叫び声をあげ ている。 女性の声「アスナ! アスナ!」   必死に叫ぶ声は、喧騒にかき消され―― ○旧市街グラゼ・とある民家(現在) 女性の声「(大きく)アスナ!」   その声で目覚めるアスナ・セオ。   廃墟と化した民家。かろうじて原型をとどめては いるものの、天井はなく、   壁には無数の穴があいている。   瓦礫の中、アスナは眠っていたのだ。   寝ぼけ眼をこすりながら、穴から差し込む日差し を眩しそうに見やる。 アスナ「(疲労感のため息で)……夢」 ○旧市街グラゼの街並み   テロップ『旧市街グラゼ』   民家から出てくるアスナ。   瓦礫の山、復旧作業もされていない放置された街、 グラゼ。   閑静としているが、その光景は当時の悲惨さを思 い起こすものがある。   その街をただ一人、セーラ服姿のアスナが歩む。   ――と、携帯の着信音。   スカートのポケットから携帯を取り出すアスナ。 着信は父親から。 アスナ「……(通話ボタンを押す)」 父の声「アスナ! 今どこにいる? 今日はマナミさ  んが家に来るって言ってたろ。学校もサボったらし  いな。連絡があったぞ」 アスナ「(黙って聞いている)……」 父の声「聞いてるのか? アスナ、どこにいるのか言  いなさい」 アスナ「……グラゼ」 父の声「なっ! お前、なんでそんな――」   アスナは言い切ると電話を切った。   再び着信。 アスナ「……アスナ選手、第一投――」   大きく振りかぶるアスナ。 アスナ「投げましたぁっ!」   携帯を投げ飛ばすアスナ。勢いよく飛んで行く携帯。   瓦礫の隙間へと入る。 アスナ「(嬉しそうに)ストライーク!」   両手を挙げ、嬉しそうに空を見上げる。 アスナ「(空を見て、憂鬱な顔に)……」   白く薄い膜で覆われた空。
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