0人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
葬儀には特別に出席させて貰った。
式が済んで出棺するまでのほんの僅かな時間に、彼のお姉さんに声をかけられた。
「有村 あすみさんでしょう?」
「はい」
「北原 瞬の姉の、夏織って言うの。貴女のことは、弟から聞いてたわ。時間ある? 良かったら、って言うのもなんだけど、一緒に行かない?」
そう言って彼女が指さしたのは霊柩車で。
「いいんですか?」
「もちろんよ。両親も賛成してくれてるの」
ご両親が会釈して下さったので、こちらも会釈を返した。
火葬場に到着して、二時間程の待ち時間。
その間に、夏織さんと二人きりで話した。
「私が見舞いに行くとね、いつも貴女の事を話してたわ。表情がくるくる変わって、可愛い女の子なんだよって」
「本人に可愛いなんて言われたことないのに」
「あの子素直じゃないから」
夏織さんはくつくつと笑った。
「貴女から告白された日ね、かなりの慌てようだったのよ。『どうしよう、オレ告白されちゃった』って言いながら、枕抱きしめたり布団握りしめたり。もう可笑しくって」
「でも、ふられました」
「そうね。瞬の病気のことは聞いた?」
「はい。会ったその日に。手術でしか治らないことも、その手術が難しいことも」
手術しなければ長くは生きられないことも、手術中に死んでしまう可能性があることも。
最初のコメントを投稿しよう!