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「貴女より先に死んでしまう可能性があるから、『彼氏・彼女』の関係にはならないほうがいいかもしれない、そう結論を出したのよ、あの子」
「そうなんだろうなって、思ってました」
本当にいい子ね、と優しく頭を撫でられる。
さすが姉弟、温もりも手つきもよく似ていた。
ことん、と小さな箱が、目の前に差し出された。
「これは、瞬から貴女にって預かったものなの」
「預かった?」
「一週間前にね、ずっと渋ってた手術を、突然受けるって言い出して、インターネットでこれを注文してたの」
小さな小さな、片手に納まってしまうほどの箱。
「本当にいい男になって、今度は自分から、貴女に告白したいからって」
夏織さんが、丁寧にラッピングを外していく。
「もしもの時は私から貴女に、見舞いのお礼として渡してくれっていうんだもの。縁起でもないこと言うんじゃないってぶん殴ってやったわ」
出てきたのはアクセサリーのケース。
ふたが、開く。
シンプルなデザインの指輪が、鎮座していた。
テーブルに、ポタポタと雫が落ちていく。
「ばかぁ、こんなの死亡フラグじゃんかぁ」
「本当に、バカな弟よねぇ。でも、そんな弟を好きになってくれてありがとう」
指輪を手のひらにのせられた。
「受け取るのも、拒否するのも、貴女次第よ。好きにしていいわ」
渡されたそれを、じっと見つめて、ぐっと握り込んだ。
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