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ぬるり、と舌が這う。
「うひゃあっ!」
「なんです、色気のない声をだして」
クスクスと笑う相手を、ぐい、と押し戻して、奈央はその相手の腕の中から逃げ出した。
「いきなり舐めないで!」
顔を真っ赤にして逸らす。
「毎度のことなのに、君はなかなか慣れてくれませんね。でもまあ、それもまた可愛らしくて好きですよ」
「うるさい!」
「フフ」
笑う相手を睨みつけたけれど、さほど効果はないようだ。
好きだと告げられ、(押しに負けて)付き合うようになり、その日の夜にされた突然の告白は、眼前の、六平桜李という男が『吸血鬼』であるというものだった。
週に一度、ほんの少量という約束で、奈央は彼に血を与える事を承諾したのだけれど。
(何でその方法がいちいちエロいのさ!)
必ず項から吸血するのだ。しかも毎回舐められる。
血なんて何処から摂取しても同じであろうに。
「心臓に近い方が美味しいんですもん」
「人の心を読むなぁっ!」
「読んでませんよぅ。君が判りやすいこと考えてるだけです」
ひょい、とまた腕の中へと拘束された。
「別に『血』に限定しなくてもいい、とも言いましたよね?」
「それは絶対やだ」
「何故です? 僕は満たされて君は気持ちよくなれる、一石二鳥じゃないですか」
「い・や・だっ!」
「強情ですね」
「桜李にデリカシーが無いだけでしょ」
「デリカシー、ですか」
吸血鬼は首を傾げる。
「確かに付き合って間もないのにいきなりセッ…むぐっ」
言いかけた桜李の口を、奈央が両手で塞いた。
「口に出して言わなくていいから! そういうところがデリカシーがないって言ってるのよ!」
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