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昔、昔と言ってもほんの百五十年ほど前のことだ。
この頃の京の町は荒れていた。
町には、”不逞浪士”と幕府が呼んでいた浪人どもが溢れ、天誅やらが流行していた。
そのほとんどは長州藩を筆頭とする、倒幕派攘夷志士の仕業だった。
一方、幕府側には、新選組と言う名の、人を斬るのがめっぽう上手い集団がついていて、彼らが不逞浪士なる輩を見つけては、
斬った。
彼らの寝ぐらは京の南の外れ、壬生に在り、
京の人々は彼らの事を「壬生狼(ミブロ)」と呼んでいた。
壬生の狼と言えば聞こえはカッコいいが、京の人々の真意は、”身ぼろ”。
……「身なりのぼろい貧乏人浪士が、食う為に人を斬っている」……であった。
そんな壬生狼の中に少年はいた。
彼の名は、楠小十郎。
年は、数えの十七。
京の出身。
少年は、美男五人衆などと呼ばれるほどに、かの人斬り集団の中でも目立って綺麗な顔立ちをしていた。
その顔は、子供っぽさの抜けない童顔で、くるくると良く動く黒目がちで円らな瞳が印象的な、可愛らしい美少年だった。
まだ、声変りをしていないのか、女の様な高い声で話すのだ。
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