永遠の昼下がり

2/11
95人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
昔、昔と言ってもほんの百五十年ほど前のことだ。 この頃の京の町は荒れていた。 町には、”不逞浪士”と幕府が呼んでいた浪人どもが溢れ、天誅やらが流行していた。 そのほとんどは長州藩を筆頭とする、倒幕派攘夷志士の仕業だった。 一方、幕府側には、新選組と言う名の、人を斬るのがめっぽう上手い集団がついていて、彼らが不逞浪士なる輩を見つけては、 斬った。 彼らの寝ぐらは京の南の外れ、壬生に在り、 京の人々は彼らの事を「壬生狼(ミブロ)」と呼んでいた。 壬生の狼と言えば聞こえはカッコいいが、京の人々の真意は、”身ぼろ”。 ……「身なりのぼろい貧乏人浪士が、食う為に人を斬っている」……であった。 そんな壬生狼の中に少年はいた。 彼の名は、楠小十郎。 年は、数えの十七。 京の出身。 少年は、美男五人衆などと呼ばれるほどに、かの人斬り集団の中でも目立って綺麗な顔立ちをしていた。 その顔は、子供っぽさの抜けない童顔で、くるくると良く動く黒目がちで円らな瞳が印象的な、可愛らしい美少年だった。 まだ、声変りをしていないのか、女の様な高い声で話すのだ。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!