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「暇なら、稽古つけてやるぜ」
原田の稽古は乱暴だから、誰もが嫌がる。
もちろん、小十郎だって……
でも、嫌と言う勇気も無いんだ。
だから、ついて行く。
原田は、そんな少年が可愛かった。
……だが、少年には秘密があった。
京の町は天子様のおわす町。
勤皇派であり、幕府には冷たい。
少年の家も例外では無かった。
攘夷を行う集団だと聞いて入隊した。
確かにはじめはそうだった。
それがいつの間にか、不逞浪士狩りが仕事となり、
狩る不逞浪士は、攘夷浪士へと変わって行った。
そして少年は、攘夷志士と繋がっていたのだ。
七月には、尊皇派攘夷志士として活動の先達を担っていた、筑後は久留米藩の真木和泉と出会っている。
京の地理に疎い長州の志士たちの案内役を頼まれた。
勿論、真木は、少年が新選組の一員だと知っている。
その上での、頼みだった。
「長州があそこに潜らせている間者との連絡役もしてもらいたい。
何、裏切りでは無いよ。
攘夷の為の行為だ。
幕府の狗も、攘夷集団なのだろう?」
真木はそう言って、少年の肩を叩いた。
少年に選択の余地は無かった。
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