永遠の昼下がり

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特に危険な任務でも無かった。 道案内と、書簡を指定された家に届けるだけの仕事。 おつかいのようなものだ。 まだ子供の楠に、巡察や討ち入りの仕事が回って来ることは無かったから、この程度の仕事をこなす時間はいくらでもあった。 だが、企みはいとも簡単にばれていた。 つい先日も、芹沢局長とその側近、それに妾が暗殺されている。 ここはそういう集団なのだ。 少年はその現実を、すっかり忘れていた。 「小十!!逃げるぞ!」 同じ間者の一人、松永が少年に声をかけ、門を飛び出した。 「松永ー!貴様ぁ!!」 永倉助勤の怒号が聞こえた。 その声に恐怖を感じる。 いつの間にか、腕利きの幹部らが集まり、粛清が始まっていた。 二人斬られたのを見た。 小十郎も慌てて門を飛び出し、ぬかるんだ畑に入った。 なぜ、畑に逃げ込んだのかわからない。 日はそろそろ高くなろうとしているのに、この日はいつまでも、乳白色の朝靄が晴れなかった。 泥に足がもつれ、ぬかるみに捕われ、前に進めない。 追って来たのは原田だった。 彼は、その大きな体躯を生かし、大股で畑のぬかるみの中を迫って来る。
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