【真夏のM字開脚】

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◆ 連れていかれたのは、地下室のようだった。 私がペンタゴンにハッカー行為を仕掛けたと彼らは言った。 そんな力は無い。 容疑はすぐに晴れた。 ところが、PCを押収されてしばらく滞在するように命じられた。 一室を与えられ、監視も目に見える範囲では無くなった。 私は紙と鉛筆を貰い数学パズルを解いていた。 「ケニヒスベルクの橋」は、私の取り調べを担当していた男性も何度かやってみたそうだ。 私はその横で、タコの絵を描く。 『それは?』 『このタコの脚を、同じところを二度通らずに元の位置に戻れるか』 『ユニークだね。解けたのか?』 『ある男の子が、解いてくれたの。』 『ふうん。でも君はその時に魔法にかかったんだね。それは、解けてないだろう?』 ◆ 十二歳の夏、公園でタコの形の遊具で遊んでいた。脚がそれぞれ、パイプや梯子、吊り橋のように違う遊具で構成されている。頭部は空洞で、口から墨の滑り台が伸びている。 同じところを通らずに、元のところに戻ってこられるか。 二人で地面に線を描いて、考えて、出来なくて。 最後に彼が解いてくれた。そのあと私は倒れて、軽い熱中症にだったんだけど。 ハンカチを濡らしてくれて、人を呼びに行ってくれてる間に、通りがかった人が救急車を呼んでくれた。 名前も知らない男の子。ハンカチは今でも持っている。中学生になってから『七つの橋』を知って、あのタコ遊具と同じだと思った。 数学的思考を持っているあの子。 大きくなっても数学が好きだったりして。 ハンカチには、名前の代わりに数字があった。 『3 9』 サクなのかな。 もしそうだとしても。覚えてる? 何度か『七つの橋』の話をした。 でも、タコの話はしなかった。 タコは八本脚だし。 でも、あのタコは一本を上に上げていて、地上にあるのは七本だけど。 『会えるといいなMIK。君はもうすぐ日本に帰れるだろう。 ただし、この男のデータは貰っておく』 そう言って男性は握手を求めた。 画面の『ヨーヘイ』の顔をつつく。 奴は危険だよ、サク。 もし、奴を止められたら私は『MIK』 ........ミクという名前を捨てる。 秘密に関わらずにサクの隣に居たい。 image=484365356.jpg
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