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奴は、よりによってサクの学校に二年前から潜り込んでいた。
『ヨーヘイ』
と生徒たちに呼ばれている。
サクは、嘘をついていた私を許すと言ってくれた。でも、本当の私を知ってもそう言ってくれるかな。
溜息とともに、起動させる。
ハワイの女子高生のページに入り
日記の頭の文字を拾っていく。
【MIK、掴んだか】
【奴は、やる気だ】
やはり。
奴は、あの高校で何をする気だ。
私に気づいているのなら、逃げるはずだ。
........私は、情報を洗う。
泥を落とし、玉石混交の情報を上に渡す。
詳しくは知らされていない。一年の三分の一はこの作業に携わり、報酬を得ている。
ハッカーの手伝いのようなことをしているのだと思う。
この三年でパソコンは五台逝ってしまわれた。ワクチンの実験体でもあるのだと思う。
気分転換にパズルをメインにしたサイトを開いていたら、サクと知り合った。
彼は数字が人間であるかのように語る。
机の前に貼っている紙は、うんと昔に描いたものだ。
「ケ二ヒスベルクの七つの橋」という数学の有名なクイズだ。
【川に囲まれた街に入る七つの橋を、同じ橋を通らずに元の位置に戻ってこれるか? 】
これは答えよりも解き方に意味がある。
それ以上に、私には思い出があるクイズ。
サクと会うのが、楽しみだけど怖い。
時差を計算して同じようにやりとりを続けていた。
それでも、いつ連絡出来なくなるかわからない。
コーヒーチェーン店でサクに区切りのメールを送った。
立ち上がろうとした時、両側から黒い手が伸びてもう一度椅子に戻された。
背筋が冷える。
気配を感じなかった。
「ちょっと一緒に来てくれるかな」
流暢な日本語が余計に恐怖を煽った。
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