【真夏のM字開脚】

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◆ 奴は、よりによってサクの学校に二年前から潜り込んでいた。 『ヨーヘイ』 と生徒たちに呼ばれている。 サクは、嘘をついていた私を許すと言ってくれた。でも、本当の私を知ってもそう言ってくれるかな。 溜息とともに、起動させる。 ハワイの女子高生のページに入り 日記の頭の文字を拾っていく。 【MIK、掴んだか】 【奴は、やる気だ】 やはり。 奴は、あの高校で何をする気だ。 私に気づいているのなら、逃げるはずだ。 ........私は、情報を洗う。 泥を落とし、玉石混交の情報を上に渡す。 詳しくは知らされていない。一年の三分の一はこの作業に携わり、報酬を得ている。 ハッカーの手伝いのようなことをしているのだと思う。 この三年でパソコンは五台逝ってしまわれた。ワクチンの実験体でもあるのだと思う。 気分転換にパズルをメインにしたサイトを開いていたら、サクと知り合った。 彼は数字が人間であるかのように語る。 机の前に貼っている紙は、うんと昔に描いたものだ。 「ケ二ヒスベルクの七つの橋」という数学の有名なクイズだ。 【川に囲まれた街に入る七つの橋を、同じ橋を通らずに元の位置に戻ってこれるか? 】 これは答えよりも解き方に意味がある。 それ以上に、私には思い出があるクイズ。 サクと会うのが、楽しみだけど怖い。 時差を計算して同じようにやりとりを続けていた。 それでも、いつ連絡出来なくなるかわからない。 コーヒーチェーン店でサクに区切りのメールを送った。 立ち上がろうとした時、両側から黒い手が伸びてもう一度椅子に戻された。 背筋が冷える。 気配を感じなかった。 「ちょっと一緒に来てくれるかな」 流暢な日本語が余計に恐怖を煽った。 image=484364666.jpg
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