【真夏のM字開脚】

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【真夏のM字開脚】

昔観た某製薬会社のCMのように、一斉に鳩が飛び立った。 あ、俺の心象風景っス。 いやそんなことよりも。 「今、何つった?」 ヘラヘラ笑う、冬加の首根っこを押さえる。 「だから、学祭のうちのクラスの演物、決まったぞ。」 「そこはいい。何をやるって?」 「だから、【M字開脚】だよ」 爽やかに答えてくれた。 「何だそれ、おかしいだろ」 「えーいいじゃん、準備いらねーし、楽だし。座って待機するだけだってさ」 「待て、なんでそんなに具体的に。反対する奴いねーのかよ」 「ないないキーン」 冬加が、人体にあるまじき柔軟さで全力でふざけている。 「イラッとするから、ヤメロ」 クラスの奴らも、何故か平然と【M字開脚】を受け入れてる。 柔軟体操するグループや、 熱血の松岡は他人にレクチャーしている。 「このMでグランドスラムを!」 委員長の優も、素知らぬ顔で参考書をめくっている。 「なあ、優もマジでやんのか?」 「........他の案に比べたらね。仮装も販売も飲食もダルい。 これなら単語帳くらい捲れるし、寝れる。」 おかしい。 絶対におかしい。 俺が季節外れの熱で休んでいる間に、世間では【M字開脚】が浸透してんのか? もしやガッテンで試してた!? 「ないないキーン」 「うるせえ。」 しかも、俺が戸惑うのは。 「うち、男子校じゃねーか!!」 むさい男がM字開脚って! 誰のために! 何のために! 「そんなのは嫌だー!」 「おっ。サクタロウも乗ってくれたの?」 「パン共の話じゃねーよ!」
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