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様々な雑用を終えて、自分のアパートに帰り着いたのは深夜になっていた。
「武さん」
「え……」
生徒にもらった花束が、パサリと狭い廊下に落ちる音だけが鮮明に聞こえた。
「約束したでしょ?」
拾い上げてくれる。
微笑んでくれる。
料理人を目指す、元、教え子。
声にならない。
動けない。
「部屋の鍵出して」
「……はい」
ちりん、と手の上に落とす。
鍵をあけ、私を先に入らせて自分も続き、また鍵をしめる。
どういうことだか……わからない。
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