さよならの約束を

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「で、和風の割烹旅館みたいにするわけ?」  コピー用紙に無理やり話題を戻す。 「俺は住み込みで働くから、武さんは教師を続けられるよ?」 「……そうだね」 「だから……住みはじめてから、いつでもいいから、俺とのこと……考えて」  初めての恋で何もわからない将志は、どんな姿で、どんな甘い声で私を呼ぶんだろう。  まずい、あまり想像すると自分が危うい。 「……了解しました。ただ、電気とガスだけ開通しておくよ。とりあえず私は先に引っ越すから。あ、通勤用の車を買わないと不便だな」 「あ! 助手席、一番に乗せてほしい!」 「え、乙女ちっく?」 「……悪いかよ」  ふいっ、とそっぽを向いた。 「とりあえず明日にでも本家に電話して、ナギと会わせてもらおうか」 「あ。俺、仕事ある」 「聞いてない!」 「進学決まってから、店長が接客の勉強にってホストさせてくれてる。料理はまだ修行先を探してるけど」
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