さよならの約束を

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 黒いスーツはシワだらけになってます。気をつけて帰って下さい、将志より。 「……よく言うよ」  即行で寝たくせに。  乱暴にしちゃダメ!! 父より、と返ってきた。 「……どうします?」 「本当のことを言う」  何もありません、武より。 「それはそれで!」 「うるさい、何もないだろ!」  逆だったか。大事にしてもらいなさい、母より。 「……で、なんて返すわけ?」 「……何もねえよ」 「だよね」  何もありません、将志より、と返信していた。  理解があると言うよりは、やはり変な人たちだ。  将志は私の手に携帯を返すと、布団から起きて、うーんと伸びをしている。  最後に見た、将志の制服がシワだらけになっていた。  サナギを脱ぎ捨てた、蝶みたいで。 「……うん?」  飛んで行かないよう、背中から抱きしめた。
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