さよならの約束を

191/195
前へ
/197ページ
次へ
 だんだん、カラクリが読めてきた。  たぶん、女装かドレスでも着せられた将志が来て、結婚式の真似事でもさせられるんだろう。  しばらくして、現れたのは店長だった。  黒のタキシードを纏っている。  黒というのが実はいちばん派手な色だ、と思わせるほど華やかだ。 「本日はおめでとうございます。ご注文は」 「桜茶」  くす、と笑ってくれる。 「かしこまりました」 「私、服装このままでいい?」  え? と、予想外の反応をされた。  結婚式じゃないのか。  拍手が起こり、ライトに照らされた場所に、将志がいた。 「……あらまあ」  坊っちゃん刈りのカツラに、詰襟の学生服、ガラスの厚いメガネをかけている。  校長先生に扮しているのは戸口部長だ。  仕事柄、スピーチに慣れているのか、それらしい言葉を贈ってくれる。
/197ページ

最初のコメントを投稿しよう!

479人が本棚に入れています
本棚に追加