さよならの約束を

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 これは、ちょっとした王様気分だ。  男ばかりなのが何とも残念だとは言えないけど。 「先生、やさしい……」  ホストが甘えた声をだす。  そうか、みんな何かしらの過去持ちで、求めても得られないものを、夢のように与える仕事に就いたんだな。 「うん、良い子たちだな。ひとつ、授業をしようか」  立ち上がり、フロアを見渡した。 「幸せっていう言葉がある。幸せにする、幸せにしてもらう、とは言うが、本当の幸せとは、他人が決めることかな?」  違うと思う、と可愛い系のホストが答えてくれた。 「どう思います? 店長」 「私は私が決めますね」 「戸口部長は?」 「幸せは、するとかされるとかでなく、幸せになるもの……かも知れない」 「初男?」 「俺は……あなたを幸せにしたいし、幸せにもされたい」 「答えは、ひとつではないし、たくさんの正解で世の中はできている。でも私は、幸せに、し合う。し合うから仕合わせる、つまり、幸せなんだと思う。与えるだけでも、頂くだけでもなくてね。いつか、ここにいるみんなが、そんな人に出会えることを、祈ってます。授業、終わり!」  拍手が起きた。
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