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「あ、雨降ってきたっ」
せっかくのイイ場面を壊したのは、ようやく降りだした雨と忍の声。
「“けんちゃん”まで走るぞっ」
「遠いしっ」
「香子さん、折りたたみ傘とか持ってないの?」
「持ってないわよっ」
慌ただしく動き出した3人の後を追って立ち上がった。
「女子力、低いんだよ」
独り言にしたはずだった。
だけど、斜面を上がりきったところで待っていたのは亨と香子の睨みと、それに怯む俺を見て笑う忍だった。
不安を持たずに未来へ向かうことは決して容易いことじゃない。
だけど、信じてみることくらいはしたっていいと思う。
意味の無いことに笑い転げた日々を。
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