蒼い春

25/25
526人が本棚に入れています
本棚に追加
/83ページ
「あ、雨降ってきたっ」 せっかくのイイ場面を壊したのは、ようやく降りだした雨と忍の声。 「“けんちゃん”まで走るぞっ」 「遠いしっ」 「香子さん、折りたたみ傘とか持ってないの?」 「持ってないわよっ」 慌ただしく動き出した3人の後を追って立ち上がった。 「女子力、低いんだよ」 独り言にしたはずだった。 だけど、斜面を上がりきったところで待っていたのは亨と香子の睨みと、それに怯む俺を見て笑う忍だった。 不安を持たずに未来へ向かうことは決して容易いことじゃない。 だけど、信じてみることくらいはしたっていいと思う。 意味の無いことに笑い転げた日々を。
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!