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雨が降ると思い出す人がいる。
朝目が覚めたとき、外はしとしとと雨が降っていてぼんやり昔に思いを馳せた。
もう何年も前の話だ。今年三十路になる自分からは想像できないほど若いときの話。
高校時代は遠く過ぎ、あれからも人並みに彼女もでき人並みに生きてきた。
ただ何度他の人と付き合っても、何年たっても、鬱陶しい梅雨の季節に脳裏をよぎる人は決まっていた。
高校生の青春を全部捧げた人だった。これから先なにがあってもずっと一緒だと信じていた。
男同士、なんて問題は俺たちには関係ないと思っていた。
「もし、なんて仮定の話はしたくないけど」
君がまだ生きていたなら。今日は違っていただろうか。
大嫌いな梅雨。
雨が降ると思い出す人がいる。それは変わらないだろう。この先も、一生。
仮定の話はしたくない。悲しくなるだけだから。
俺は今日、大好きな君とは違う人と結婚する。
End
たまにこんなお話読みたくなりませんか?奏佳の文才ごときでは上手く表現できず悔しいです。
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