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目を閉じている絵の中の私は笑っている。
現実と違って幸せそう。絵を直視出来なかった。
リョウタは寝食を忘れて絵を描き続ける。
「何で、絵ー…描くの?」
夢中になってるリョウタに声をかけるのは躊躇いが有ったけど…。
「好きだから…」
ニカッと笑ったリョウタの顔は、
悔しいほどに眩しくて…愛おしいと思う笑顔だった。
*****
その絵を描き上げたリョウタは、
絵を丁寧に包みどこかに運んだ。
部屋の中で一番幅を利かせていた物が無くなると、
部屋は一層ガランとした。
その日の晩もリョウタはアタシの腕の中で眠る。
「何で…アタシを拾ったの?」
言葉は悪かったけど、その言葉が一番しっくりきた。
「いつか…わかるよ。」
リョウタはそう言って、何も教えてくれなかった。
聞く事で捨てられるのが怖い私は聞くのを止めた。
静かな寝息は、眠れないアタシの睡眠導入剤で、
リョウタの隣だったら、
静かに深く…眠る事が出来た。
私は…この不思議な状況を幸せだと思った。
リョウタの事を何も知らなくても…
リョウタが私の事を知らなくても…
リョウタが…私を欲しいと思わなくても、
ただ…ただ、こうして隣にいさせてくれれば…
それだけで…良かったんだ。
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