12人が本棚に入れています
本棚に追加
西暦2008年3月20日
アフガニスタン ヘルマンド州
日中は、熱砂のごとき土煙の舞い上がり、夜となれば見も凍える寒さの中を男たちは、足跡を立てずに素早く走り抜けていく。
砂漠戦用の迷彩服を身に纏った20人のアメリカ合衆国海兵隊員は、高度5千メートルからのへり降下を軽々とこなすと、夜陰にまぎれながら迅速に目標へと近づきつつあった。
男たちの先頭を走っていた屈強な体格をした短髪の男は急に立ち止まると後方へ伏せろとハンドシグナルを送り、腹ばいとなる。
男は、腰のバックパックから双眼鏡を取り出し、前方に見える集落を見る。
「こちらダッチ。目標を捕捉した。HQ。指示を」
無線機でダッチ・コウタロウ・ヤマダテ大尉は静かに言う。
『こちらHQ。了解。作戦に移れ』
作戦本部から返答が来る。
ダッチは、素早く部下たちへ散開するように指示を送る。部下たちは、音も立てずに散開し持ち場へとつく。
「タツキ。見えるか?」
『あぁ。お前の坊主頭が良く見える。』
無線機からタツキの声が聞こえる。
「援護は任せたぜ? 相棒」
そう言うとダッチは、集落へと走り出した。
最初のコメントを投稿しよう!