第二章

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 にしても、返事がない。伝わっていないのだろうか? 「おーーい、  トシさん聞いてる?」  叫んでみた。  そしたらこの男、声に出して怒鳴っていた。  ――あほちゃう。 「おい、留香なのか?」 『なあ、声に出さん方がええで』 『やりずれえんだよ……沖田の時もこうだったのか?』  ――沖田?  土方は、『総司』と呼んでいた。  彼の夢に入った時ですら、総司と呼んでいた。  あたしはここで、幾許(いくばく)かの時間が経った事を悟った。 『とにかく、ここはどこ?』  一番知りたかった事を再度聞いた。 「日野だ」  土方は、またもや声に出して答えた。 『日野』と。
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