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◇◇◇
土方は、あたしの言葉に答えもせず、相槌も打たず、独り考えを巡らせながら、ただひたすらに歩いていた。
屋敷に着くと、こっそり音を立てないように家に入った。
建てたばかりなのだろうか。
暗闇でも真新しく美しい屋敷なのがわかった。
『でかい家!』
まあ、昔の豪農はこんなもんなんだろう。
だって佐藤彦五郎と言えば、ずっと新選組を陰で支え続けたパトロンのようなものだったのだから。
だが屋敷は広いが豪奢な感じではなく、質素堅実と言った雰囲気だ。
暗闇の中、踏みしめる廊下は美しく磨かれているであろう、冷たくてすべらかな感触。
落ちついた屋敷の空気に、この家の主人の為人(ひととなり)を感じた。
土方は台所に入り、水がめの水を喉を鳴らしながら飲んだ。
ふと、気配に気付く。
「お姉さま!」
思わずあたしが、声を上げた。
「ひっ」
彼女は驚き、思わず落としかけた手持ちの燭台に左手を添えた。
土方が慌てて口を押えた。
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