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そして、夢を見た。
あの女が居た。
『留香さん…』
一応、年上だ。〈さん〉を付けて呼んでみた。
――いや、待てよ……あいつは、百五十年先の時代がどうこう、
じゃあ、俺の方が、百四十も年上じゃねえか。
まあ、そんなこた、どうでもいい。
俺の夢の中の留香は、やはり、沖田の格好で泣いていた。
『何が哀しい?』
『総司が山南さんを斬ったこと……』
『あいつは、泣いちゃいねえぜ』
『あの子は、絶対、そういう時には泣かへんの。
総司は自分が斬った相手のために、泣くことはあらへん』
――それが、あいつの覚悟なのか?
俺は初めて思い知った。
その夜の夢は、それだけだった。
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