第三章

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 ――朝……なのか?  昨日は妙な夢を見た。  あたしは再び幕末に降り立った。  しかも、相手は土方だ…… 「ふうぅーー」と細くため息をつく。  目を開ける前に、異変に気付いた。  ――布団?   ベッドじゃない。お気に入りのコンパクトパイルのシーツじゃない!  目を開ける勇気は無い。目を閉じたまま布団を撫でてみる。  少し、お日様の匂いの残る布団は…… 『あねさんがよ、昨日はいい天気だったから、干していたのさ』 『土方!』 「だからなんで、呼び捨てにするんだよ、てめえはよぅ!」  やっぱり、夢は覚めなかった。  あの時と同じだ……  障子の外から声がした。 「トシさん、起きたの?  誰かいる?」  ――姉のおのぶさんだ。 「誰もいねえ、独り言だ。  今起きるからよう」  うるさそうに返事をして、布団の上に座った。  そして、あたしに語り掛ける。 『いいか、これは夢じゃねえ。  今日から、ここで生きるんだ。くれぐれも、俺のじゃまをするな。  あ、それとな、あねさんは〈ノブ〉じゃねえ。誰と勘違いしてるのか知らんが、あれは〈トク〉だ』
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