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土方はあたしの返事など待つことなく、枕元に置いていた着物に着替え始めた。
黒っぽい小袖。チャコールグレーとこげ茶の間みたいな渋い色。
――う……地味……だ。
あたしも総司も、淡い色を好んだ。
路考茶(緑味の黄茶)、淡い小豆色、芥子色……
それに、藍色の袴。
お給金が出た時、大丸で縦縞の袴を買った。
――あれは、足が長く見えてカッコよかったっけ……
今日の土方は、仙台平風の細かい縦じま。
定番のコーディネートだ。つまんないの……
『うるせえ、ごちゃごちゃと。
日野には遊びに来たんじゃねえ。
他の村の名主と会ったり、募集で集まったもんと会ったりと忙しいんだよ。遊び人みてえなカッコしてどうすんだぁよ』
土方はお国ことばで罵った。
ほらね、やっぱりこの人って、常識人なんよね。
真面目っていうか……あんなぶっ飛んだ頭してるくせに……
『俺の頭ン中で俺の悪口を言うな! くそアマ』
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