第三章

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 土方はあたしの返事など待つことなく、枕元に置いていた着物に着替え始めた。  黒っぽい小袖。チャコールグレーとこげ茶の間みたいな渋い色。  ――う……地味……だ。  あたしも総司も、淡い色を好んだ。  路考茶(緑味の黄茶)、淡い小豆色、芥子色……  それに、藍色の袴。  お給金が出た時、大丸で縦縞の袴を買った。  ――あれは、足が長く見えてカッコよかったっけ……  今日の土方は、仙台平風の細かい縦じま。  定番のコーディネートだ。つまんないの…… 『うるせえ、ごちゃごちゃと。  日野には遊びに来たんじゃねえ。  他の村の名主と会ったり、募集で集まったもんと会ったりと忙しいんだよ。遊び人みてえなカッコしてどうすんだぁよ』  土方はお国ことばで罵った。  ほらね、やっぱりこの人って、常識人なんよね。  真面目っていうか……あんなぶっ飛んだ頭してるくせに…… 『俺の頭ン中で俺の悪口を言うな! くそアマ』
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