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食事を済ませた土方は、部屋に篭り刀の手入れを始めた。
『あたしが知っている土方のより短い……』
『これは十二代兼定の作だ。二尺三寸ちょい。
短いから、京の街中や討ち入りにはもってこいなんだよ』
『ふーん。
そういえば、前の夢では総司とよく刀の手入れをしてたなあ。
あたし、刃が綺麗になるのが好きやったから……』
打ち粉を打っていると、すっと障子が開いて、少年がひょこりと顔を覗かせた。
――この子……そういやさっき、一緒に食事をしていたっけ……
「トシさん」
「おう、源之助か、入れよ」
――ああ、この子が例の源之助……
十五、六歳くらいかなぁ。利発そうな子だ。
「母上は何て言ってました?」
「ん……駄目だとよ。
彦五郎さんはいいって言ったんだがよ……」
「はあぁ、やっぱり駄目ですか。
俺も、京に行きたかったなぁ」
少年は土方の斜め前に、足を崩して座った。
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