第三章

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「ああ、おめえの砲術はぜってえ、役に立つからなあ……  勘定方にも向いてそうだしな。  けどな、あねさんがいかん、ちゅうたら……」 「うん、わかってるよ、  母上の言うことは絶対だもん」  少年はつまらなさそうに、うなだれた。  そして、土方の兼定を見た。 「いいなあ、俺も侍になりてえ」  土方は、しばらく何も言わず考えていた。  そう、土方は武士の世の終わることを知っているのだ。 『でもね、日野の人々も最後まで戦うことになると思うよ。  あんなん、ここは御料所なんやろ?  徳川幕府直属の村ってことやん』 「そうだな……」 「何?」 「ん。いやさ、おめえもきっと侍になれるさ」 「どうしてさ?」  少年はその利発そうな目を好奇心の色に染め、土方の方をまっすぐ見た。
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