第三章

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 すらりしたと長身で立つと、名主と言うよりは武士の雰囲気がした。 「お、すまねえ」  下男が土方の下駄を縁の下に用意した。  ――ほら、一緒に並ぶと彦五郎さんの方が目の位置が高い。  天然理心流の極意皆伝だという。 『この長身から打ち下ろす剣はどんなんやろう?』  あたしの中の総司の血が騒ぐ。  あたしは、この人の剣を見たくなった。 「あにさん、どうだい。  あにさんも一緒に稽古をしねえか?」  土方が、彦五郎を稽古に誘った。  彦五郎の口角が上がった。 「もちろんさ。  誘われなくとも道場には、行くつもりだったぜ」  二人の男は、源之助の待つ道場に向かった。
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