第三章

10/19
前へ
/664ページ
次へ
 佐藤家の長屋門は立派な道場になっている。  美しく磨かれた板張りに正座し、真紅の胴を着ける。  彦五郎が土方の為に用意しておいてくれたものだ。  近藤さんや総司らも、この日野宿に来て、彦五郎さん達と稽古をしていたという。  色んな人々が、ここに集ったのだ。  あたしは不思議な気持ちで、正面の書や名前の書かれた額を眺める。  源之助は土方に何度跳ね返されても、食らいついてきた。  可愛い顔に似合わず、根性がある。  土方には、それが嬉しい。  それでも、ひと通り稽古をこなすと、源之助の息が上がって来た。 「よし、これまでだ」  土方から声をかけた。  そうでもしないと、この子はぶっ倒れるまで続けるつもりだ。 「ハァ、ハァ、、ハァ、ありが、とう、、ござ、、」  言葉にならない。  土方は苦笑いして、面の上から頭を小突いた。 「上手くなったな」  源之助は、歯を見せて微笑った。
/664ページ

最初のコメントを投稿しよう!

669人が本棚に入れています
本棚に追加