第二章

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 慶応元年、四月  ついこの間、元号が変わった。  昨年の京での戦が原因だろう。  ――ふん、変えたところで世の中は、変わらねえよ……  俺はこっそり彦五郎兄の家、日野宿脇本陣を抜け出し、浅川に向かって歩いた。  今回の江戸での隊士募集は、藤堂の働きもあって(藤堂平助は昨年の夏から江戸に滞在)思った以上に入隊希望者が多かった。  ――また、新選組は大きくなる。  俺は新たな組織図を考え始めていた。  浅川の土手の上に立ち、月に照らされた水面を眺める。  ――昨晩は、鹿之助さん(多摩近く小野路村の豪農で名主小島氏の嫡男。近藤勇、歳三の義兄佐藤彦五郎とは義兄弟の杯を交わした仲)も、泊まっていったし……沖田も連れて来れればよかったなぁ。  そんな事をぼんやりと考えつつ、適当な大きさの石を見つけてその上に腰を下ろした。
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