第十九章

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 元々体が丈夫ではないと伺っている。殿様は確かに線が細く、色の白い……如何にも良家の御子息といった雰囲気である。だが、この時の眼力に、これ以上あたしは逆らえなかった。  おとなしそうな顔をしているが、明らかに彼は指揮する者であり上に立つ者であった。そして近藤と土方は当然、従う者たちである。  有無を言わさぬ雰囲気の中、更に殿様直々のお言葉が頭上に落ちた。 「近藤、改めて申し付ける。  新選組はより京の警護に邁進せよ。良いか、謀反とも取れる長州の反発を、この京では許してはならぬ。上様に反発する者は徹底して排除せよ」 「は、御意!」  近藤と共に土方も畳に額を擦りつけた。  そしてあたしは、京に縛り付けられた新選組に、軽い絶望を覚えたのだ。  そう、軽い。  ――もしも……なら。……にはいくつもの仮定が当てはめられる。  彼らが容保に反発する。強行突破で長州へ兵を向ける。京の長州屋敷を襲う。 『どれもこれもあり得ねえな』  あたしの心を読んだのか、土方が諦めの呟きを頭の中に漏らした。  この長州征伐で徳川が勝とうが敗けようが、どちらにしても薩長同盟は将軍に造反、あるいは勢いを増して攘夷活動をするのだろう。禁門の変を思い出す。  池田屋事件から始まった京の戦……どんどん焼きの大火。 『確かに俺たちが京を守らなきゃなんねえ』  土方に覚悟ができた。  記憶通りに進んでいく歴史に、やはり絶望感は否めないのだ。
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