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言葉を失った俺に、羽村は苛立たちを抑えるように続ける。
「長瀬には御園さんがいるじゃない」
一瞬、何を言われているのかわからなかった。
どうしてこの場で、その名前が出るのかさえ、理解できない。
「……は? 御園?」
「隠さなくていいよ。知ってるから」
思考をすっ飛ばした呟きに、羽村はふん、と息を吐いた。
再びMacへと向き直った彼女からは、俺に対しての拒絶しか感じられない。
しかし、『御園さん』と言ったときの羽村は……燻る火種を抱えているようにも見えた。
「……ああ、なんだ」
思わず、笑ってしまう。
羽村の肩がぴくりと揺れたのを見て、俺はまた彼女に近付いた。
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