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途端、弾かれたように立ち上がった羽村。
「っ、違う!」
叫んだと同時に椅子が動く。
それは勢いを殺せないまま、俺の背後にあったゴミ箱へと激突した。
がしゃん、と大きな音をたてた後……再びオフィスには静寂が戻ってくる。
噛み殺しきれない笑みを、羽村はどう受け取ったんだろう。
彼女は今にも噛み付いてきそうな勢いで、俺を睨みつけるばかりだ。
ぎり、と唇を噛んだ羽村が、しびれを切らして叫ぶ。
「何なの、一体! 何が言いたいわけ!?」
「……べっつにー?」
嫉妬してんだろ? なんて、言ったって。
その様子じゃ、お前は認めてくれないんだろ?
だったらいーよ。
俺が勝手に、密かに喜んでしまっただけのことだって、諦めるから。
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