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「……言いたいことなんてない!」
俺の言葉に、羽村はそう切り出した。
きりきりと痛むような、高い声が耳を切り裂いていくかのようだった。
「だいたい、どうして私がヤキモチなんて妬かなきゃなんないわけ!? 長瀬が誰と何しようが、私には関係ない! 勝手に決めつけて踏み込んで来ないでよ!」
はあ、はあ、と。
息を切らしながら叫ぶ羽村。
目を逸らしたまま言い捨てた彼女の声は、震えていた。
それは、怒りによるものか。
それとも、別の何かによるものなのか。
俺には判別できなかった。
激高している羽村なんて、初めて見た。
彼女がこんなに感情のまま叫ぶ姿なんて、想像もできなかったくらいだ。
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