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ふと、歩みを止めて振り返った。
逃げるように出てきたオフィスのビルを見上げる。
まだ電気がついているのはうちのオフィスだけだ。
あの光の中にいる、羽村は何を思っているだろう。
冷たい夜風が頬を刺す。
二人で見上げた夜空に見つけた星は、厚い雲に覆われて、欠片も見つけられなかった。
俺は……少しだけ、絶望って言葉の意味を、理解し始めていた。
羽村を失う……そんな未来が、微かに頭に映し出されるからだ。
ただ、いつものように、話したかった。
飲みたかった。触れたかった。それだけだったのに。
一体、どこで間違えたんだろう?
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