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第7話 忘却と放置
頭がぼーっと・・・してきた。
いつもは3杯で止めるのについ飲んだから・・・?
なにも言わないまま虚ろな目で慧を見ていた魅羽は、足元をふらつかせると慧に寄りかかった。
「ご・・・めん、ちょっと頭クラクラして?おかしい・・・な」
「もしかして飲みすぎ?この近くに車停めてるからっ、駐車場まで歩ける?」
顔色が悪い魅羽を見て慧は心配そうに魅羽の肩を後ろから支えながらゆっくり歩く。
「うん、歩ける・・・ちょっとフラフラしてるだけだから」
また私、大野さんに甘えてしまってる。
なんで?
大野さんには当たり前かもしれないけど・・・
優しくされると勘違いするよ?
勘違いしてしまいたいのに
だけどできない・・・
彼女がいるという事実が魅羽の心を堅く閉ざしていた。
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3
「・・・こんな時間に何か用?」
「用があるのはあなたじゃないわよ・・・魅羽サンはいる?」
玄関の扉を開けたそこには挑むような目をした亜里紗が立っていた。
「はあ?いねえよ?・・・ちょっ勝手に上がるなっ」
シャワーを浴びた直後の霖はいきなり睨まれて苛立ったのか、不機嫌そうに言った。
しかし亜里紗はそんなことはおかまいなしでミュールを脱ぐと玄関マットの上に上がりスタスタと廊下を歩く・・・
「・・・帰ってくるまで待たせてもらいますっ」
「おまえなあ・・・非常識だろ?なに考えてんだ?」
霖は呆れて亜里紗を止める気が失せたのか、玄関の鍵を閉めた。
「・・・連絡とれないの」
「ん?」
「慧に電話してもっ・・・出てくれないのよ~~っ!!」
リビングのドアの前で亜里紗はわっと声を上げて泣きだした。
すると目の前のドアが勢いよく開かれた。
「あらあら、どうしたの!?・・・霖、彼女泣かせちゃ駄目じゃないの!」
泣き声に驚いた母・彩子がリビングから出てきたのだ。
「彼女じゃねーよっ!!」
「まあまあ、落ち着いて?」と亜里紗を宥めながら彩子はリビングに招き入れた。
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